書評 (Book Reviews)
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Building Harlequin's Moon
Larry Niven (ラリー・ニーヴン), Brenda Cooper (ブレンダ・クーパー)
◎書籍概要 (Book Description)
 移民船ジョン・グレンは、人工知能とナノテクに支配される太陽系から逃れ、理想郷ユミルを目指して太陽系を後にする。 しかし、星系間航行中の事故から避難した先は、巨大ガス惑星ばかりの不毛な星系だった。
 6万年余りの時間をかけ、ユミルへ航行するための燃料(反物質)を作る足場として衛星セリーニ (Salene) が作られる。 しかし、月に産まれた船員の子供たちは、情報と技術から断絶され、緩やかな奴隷制度の下に置かれていた。 それどころか、役目を終えたときは捨て去られる運命にある。
 月生まれの指導者として教育されるレイチェルは、最高議会の権力闘争に翻弄され、数々の困難に直面する。 しかし、月に骨を埋めることを決意した地球生まれの助けを得て、月の未来をかけて戦うことになる。
◎書評 (Book Review)
 ニーヴンとの共著となっていますが、主な執筆者はブレンダ・クーパーでしょう。 彼女の女性的な視点から描かれた登場人物は、不快な性差を感じさせない印象を受けます。
 物語の展開がゆっくりしているので、若干物足りない感じがありますが、 AIという存在、進化したネットワーク、情報の宝庫となるネット図書など、 テクノロジーが何をもたらすのかを良く推敲した上で物語に織り込まれていると思います。
 特筆すべきは登場人物の人間臭ささでしょうか。 人はそれぞれの信条に沿って動くもの。 誰にも賛同されなければ挫折するし、誰にも賛同されない行動は否定されるから、100パーセントの悪なんて滅多にない。 しかし、極端を避け、間を取って折り合うのが難しいのは、いつの時代、どんな場所でも同じでしょう。 きっと人間でいる限り避けられない真理と思います。
 この本を読んで感じたのは、人間が文明を捨て去るなんて無理だということです。 テクノロジーから逃げながらもテクノロジーを使わざるを得ない登場人物たちは、まるで温暖化ガスと苦闘する私たちです。 水没の危機に貧するツバルの様相は、数十年後の私たち自身の姿かもしれません。
独断と偏見に基づくお勧め度 ☆☆☆☆☆
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