書評 (Book Reviews)
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Fossil Hunter
Robert J. Sawyer (ロバート・J・ソウヤー)
◎書籍概要 (Book Description)
 クィンタグリオ(知性を持つ恐竜)が居住する月は、数万日後に潮汐作用によって破壊される運命にあった。 賢人サル - アフサンの発見したこの事実を受け、彼の友人にして皇帝であるダイ - ダイボは、移民計画を発動する。 アフサンの息子の1人であるトロカは、彼の母にして移民計画の責任者であるワブ - ノバトの命を受け、地質調査隊を率いていた。 移民計画の手始めとして、利用可能な資源をすべて網羅することを目標に。
 彼らクィンタグリオが住む月には、地質調査隊が「栞層」(Bookmark layer) と呼ぶ、不思議な境界層があった。 この境界層より新しい地層は化石であふれているのに、境界層より古い層では化石が見つからない。 しかしある日、トロカは栞層から謎の青い物体を発見する。
 その頃、帝都には不穏な空気が漂っていた。 エヅトゥーラー地域を統治するダイ - ロドロクスが皇帝ダイボに対し、自分はダイボの兄弟であり、皇帝になるべきは自分であると主張する。 そして悲劇はアフサンの身にも起きる。彼が娘の部屋を訪問すると、無惨に殺害された彼女を発見することになる・・・。
◎書評 (Book Review)
 この物語は、「占星師アフサンの遠見鏡 」 (Far-Seer) の続編です。 ソウヤーは、知性を持った恐竜「クィンタグリオ(Quintaglio)」(人で言うところの「人類(Human)」に相当する言葉)を描いた3部作を出版しています。 しかし、邦訳されたのは最初の1巻のみで、残る2巻はずっと未邦訳のまま残されています。 邦訳される気配もないので、読みたい方は頑張ってペーパーバックを読むしかなさそうです。 1作目が恐竜版ガリレオ、2作目である本作が恐竜版ダーウィン、3作目が恐竜版フロイトの物語と言われていますが、 ソウヤーの物語らしく、1作目から始まった物語が分岐して平行して進み、謎が謎を呼んで最後まで引きずります。
 この作品では、物語が主に3つに分かれて進みます。 1つ目がトロカの調査と発見。2つ目がダイボとアフサンの苦難、3つ目が監視者の回想録です。 トロカの発見が何だったのか、ダイボとアフサンがどうやって苦難を乗り越えるか、そして、恐竜たちがどうして木星のような惑星を巡る月に暮らしているのか、軽快なテンポで物語が進みます。
 本作は、他のソウヤーの作品同様に非常に分かりやすい文体で書かれていますが、1点注意が必要です。 ソウヤー自身が古生物学が大好きということもあって、生物学の用語が頻繁に登場します。 そして、これがかなりの鬼門になっています。 リンネ先生が分類学をラテン語に限ってくれたおかげで、この分野の用語はラテン語やラテン語源の単語だらけなんです。 普通の辞書には載っていない単語が頻繁に登場するので、詳しい辞書を持っていない人は、単語がわからないままに読み進む必要もあると思います。 Macユーザーであれば、詳しい英英辞書 (Oxford) がMacに用意されていて、たいていのラテン語源とフランス語源の単語も載っているので、他の辞書では分からない単語はこれで調べることができます。
独断と偏見に基づくお勧め度 ☆☆☆☆
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