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WWW:Wake Robert J. Sawyer (ロバート・J・ソウヤー) |
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 | 書籍概要 (Book Description) |
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若くて美人で実直で、しかも数学の天才であるケイトリン・デクターは生まれつきの視覚障害者であった。
しかし、ある日、日本から思いがけないメールが届く。
黒田博士が開発したチップとプロセッサーを使えば、視力を回復できるかもしれないと。
東京で網膜へチップを埋め込み、聴覚情報を処理する「eyePod」を得たケイトリンだが、残念ながら彼女の目には何も写らなかった。
しかし、偶発的な出来事から、彼女の発達した視覚神経は別の知覚能力を得ている事が判明する。
"Websight" 『ネット視』
そして、彼女がその能力を使った時、奇妙な何かがネットにいることを知る事になる・・・。
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 | 書評 (Book Review) |
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ソーヤー氏お得意のトリロジー(三部作)の第一話です。
今回のテーマは、盲目故に特殊な能力を得た少女と、ネット上になぜか産まれた自我の物語です。
率直に書くと、この本は謎を振りまくだけにとどまります。
もちろん、ソーヤー氏の紡ぎだす物語なので、この本に鏤められた複数の物語は、いずれどこかで結びつくのでしょう。
でも、この本の中では何がどうなるのかさっぱり分かりません。
Webを見ることができたケイトリン、中国のアングラ人権活動家、手話のみならず写生をこなす猿「ホボ」、そしてケイトリンとコンタクトを取る新たな知性。
この物語が続編でどう結びつくのか?今後が楽しみなものの、それだけで終わって非常に欲求不満を感じます。
少々驚いたのは、この本では珍しくソーヤー氏がミスをしていることです。
1つ目は、ケイトリンの網膜チップがeyePodとブルー・トゥースで通信すること。2つ目は、黒田博士の語学力の描写です。
1つ目の問題は、ブルー・トゥースを使うなら電力供給が必要になるし、そもそも危険な電磁波を使う技術だということです。
物語の中では、網膜チップの電力供給問題を解決していないし、ブルー・トゥースは電子レンジと同じ2.45GHzを使うので、脳と目に危険をもたらします。
ここは、(個人的には世界標準を無視した嫌いな規格だけれど)ソニー方式(FeliCa方式)を使って電力供給と通信をした方が、もっともらしいと思います。
2つ目の問題は、黒田博士の英語が完璧すぎることです。
これほど流暢に英語を使う黒田博士は、日本語で考えながら同時に英語に翻訳して喋る様子が描かれています。
でも、流暢に外国語を操る時、いちいち母国語で考えたりしません。最初から外国語で考えます。
これはすなわち、ソーヤー氏が流暢に使える外国語がないこと暗示しています。
単なる突っ込みでしかなく、物語を左右することでもありませんが、ソーヤー氏らしくないので驚きました。
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独断と偏見に基づくお勧め度 ☆☆☆☆☆
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