書評 (Book Reviews)
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For Us, The Living
Robert A. Heinlein (ロバート・A・ハインライン)
◎書籍概要 (Book Description)
 1939年7月12日、海軍航空士ペリーが運転する車は、他の車を避けるために崖から飛び出す羽目になる。 岸壁にぶつかったと思われたその瞬間、奇妙な事に、ペリーは真っ白な雪山にいることに気づく。 そして、あまりの寒さから動けなくなったペリーは、毛皮を着た女性に救い出される。
 救出からほどなく、現在は1939年ではなく2086年であることが判明する。 150年の間に世界は大きく変わっていた。 様々な歴史上の出来事、技術の進歩、新たな経済政策が社会を大きく変え、慣習もそれに合わせて様変わりしている。 ペリーは、救出してくれたダイアナの助けを借りながら学び続けるが、未来の世界は、彼の心と感情に終わる事のない試練を与え続ける。 彼が、人間の必然的な感情と考えていた感情や自然発生的に作られたと考えてきたモラルは、150年後の世界ではまったく通用しないのだった。
◎書評 (Book Review)
 この物語は、ロバート・A・ハインラインが最初に書いた長編小説とされており、ハインラインが様々な出版社に送るものの出版されず、奇跡的に残されていた原稿をもとに2003年になって始めて出版された物語です。
 この物語については、私の稚拙な書評より巻末に記載されたロバート・ジェームス博士の解説を読む方が適切でしょう。 ジェームズ博士が書かれたとおり、この本のタイトルは有名なリンカーンの演説から拝借していると思います。 おそらく、「生きてる我々のために」という意味合いだと思います。 邦訳された時、どんな邦題が付けられるか非常に楽しみですね。
 物語は、博士が指摘するとおり、登場人物の掘り下げが甘く、それ故にハインライン先生が展開する持論も心に染み込み難くくなっています。 やや退屈な内容ので、ハインラインの作品を読んだことがない人には勧められませんが、ハインライン・ファンには強くお勧めします。 この当時から、ハインライン先生が慣習や宗教、そして経済について何を考えていたか。 後々の問題作は、どういう観点から作られ、ハインライン先生が何を世の中に問いたかったのか。 ジェームズ博士の解説も含め、ハインライン・ファンが読まずには済まされない本と思います。
 個人的に興味を引かれたのは、Beyond This Horizon (未知の地平線)にも登場する怪しげな経済理論でしょうか。 コストと利益から価格算定を行うロール・プレイをしておきながら、市場価値、すなわち市場で決定される過程を入れ込んでいないためにロール・プレイが破綻しています。 しかし、貨幣流通量を調整することによって経済を安定させる考え方は、この時代においては他の追随を許さないほど先進的です。 何せ、日本では1990年代にもなってケインズ博士もがっかりの財政政策を展開して大失敗し、2000年代に入ってやっと日銀が実施した量的緩和で景気が持ち直します。 ハインライン先生が指摘するとおり、お金も流通して相対的に価値が決まるものなんです。
 どうでもいい話ですが、この物語は、書かれた年代が年代なので、やや堅苦しい文体になっています。 でも、こうした文体を学ぶのは必要でしょう。 ラテン語源の単語を流暢に使うことも国際社会ではそれなりに重要です。 野田○子先生も、こういう本を読めば、もう少し格調高い政治家らしい英語が使えるようになると思います。
独断と偏見に基づくお勧め度 ☆☆☆☆☆
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