書評 (Book Reviews)
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Foreigner
Robert J. Sawyer (ロバート・J・ソウヤー)
◎書籍概要 (Book Description)
 賢者サル - アフサンは、不幸にも戦車に轢かれ、致命的とも思える怪我を負う。 アフサンは、治癒者の予想を裏切って奇跡的に回復するものの、事故以前から抱えていた悪夢が悪化し、回復した体は憔悴する一方だった。 彼の友人にして皇帝のダイ - ダイボの半ば強引な手配により、アフサンは心理学者の「会話治療 (talking cure)」を受けることになる。
 移民計画の責任者ウェブ - ノバトは、地質調査によって発見された箱船 (ark) を探査するものの、何も得られない日々が続く。 そればかりか、間もなく迎える排卵期を控え、同僚ガリオからの積極的なアプローチに困惑させられる。 そんなある日、彼女が偶然に発見した隠し扉を開けたがために、誰もが予想し得なかった仕掛けが動き出す。
 アフサンとノバトの息子キー - トロカは、地理調査を再開し、海洋を探索していた。 そして、今まで誰も知らなかった群島を発見する。 そこでクィンタグリオの近隣種と思われる種族を発見するが、不幸なことに、クィンタグリオたちは彼らを見ただけで縄張り本能が解放されてしまうのだった。 縄張り本能を持たないトロカは、単身、群島を訪れて異種族との交流を試みるが・・・。
◎書評 (Book Review)
 この物語は、「占星師アフサンの遠見鏡 」 (Far-Seer) を始めとするクィンタグリオ(Quintaglio)シリーズの3作目です。 2作目の「Fossil Hunter」同様、未邦訳のまま残され、邦訳される気配もありません。 今のところ、この続編を読みたい方は、頑張ってペーパーバックを読む他に方法がない状況です。 Fossil Hunter が面白かったので、勢いに乗って一気に読破してしまいましたが、Fossil Hunter で気になった生物学用語が頻繁に登場することも少なく、とても読みやすくなっています。 巻末に索引が掲載されているので便利なのですが、ネタバレが含まれるので、Fossil Hunter と Foreigner を読み始める前に読まない方がいいでしょう。
 書籍概要に書いたとおり、この作品も主に3つに分かれて物語が進みます。 特にノバトとトロカの探索は予想もしなかった展開を見せ、雪崩のように結末に向かいます。 しかし、ソウヤーの作品にしては珍しく、主人公の苦難(どんな深層心理が最後まで視野を遮っていたのか)は明かされず、少々強引な印象を受けました。 意外だったのは、アフサンの治療がフロイト派心理学のように見受けられることです。 「Factoring Humanity」の主人公がユング派であり、フロイト派を嫌う発言をしていたことから、てっきりソウヤーはフロイト派が嫌いなんだと思い込んでいました。 でも、どうやらそんなこだわりはないようですね。
 この物語が出版された後に判明したことですが、恐竜、特にティラノサウルスは人間で言う思春期に相当する時期があり、この頃に急成長することが発見されています。 本当にクィンタグリオが実在したとしても、生涯成長し続けるということはないのが現実のようです。 それと、鳥類の祖先でもあり、爬虫類の子孫でもある恐竜は、人間と異なる色覚を持っていたと想像されています。 人間は3色の色覚しかありませんが、鳥類も爬虫類も4色の色覚を持っています。色覚に敏感な代わりに、いわゆる夜目が効かない鳥目です。 残念ながら、クィンタグリオが夜空の美しさを楽しもうとしても、ほ乳類が持つような明るさを識別する光受容細胞がないから、星々を見分けるのは難しいでしょう。
独断と偏見に基づくお勧め度 ☆☆☆☆☆
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