ビデオカメラやデジタルカメラを供給する日本企業は多数あり,世界市場を席巻しています。
しかし,利用者にとって本当に便利な環境を提供していると言えるでしょうか?
ウォークマンの二の舞になりはしないでしょうか?
先般,社名から「コンピュータ」を外して家電メーカーへの転身を図るアップル社。
もし,アップルがカメラを作ったとしたら,どんな製品を出してくるか?
利用者へのさらなる利便性を提供しなければ,勝ち残れない可能性はないでしょうか?
1. どんなカメラかは重要ではないが...
過去に発売されたDVカメラなどでも,写真とビデオの両方を撮影できる製品が多数ありました。
しかし,昨今のSD画質からHD画質への移行に伴って,この機能に大きな変化が現れる可能性があります。
DVまでのビデオカメラは,デジタルカメラ並の画素数を備えたビデオカメラであっても色空間はコンポジットでしたが,HD画質化に伴って色空間がコンポーネント品質となり,デジタルカメラと同等の色を再現できるようになります。
今でも一部の家電メーカーから,ビデオカメラとデジタルカメラの両方の機能を併せ持ったような製品が販売されていますが,今後は,一眼レフなどのハイエンド機種を除き,ビデオカメラとデジタルカメラの境界がますます曖昧になってくるでしょう。
もし,Appleがカメラを販売したとしたら?
誰も想像しないようなユニークな形をし,誰も想像しないような操作体系となるでしょうが,ビデオカメラとデジタルカメラのどちらとも言えない製品になることは間違いないでしょう。
【つまらない想像】i.PhoneのようにMac OSとタッチパネルのカメラなんて...
2. 映像書庫の重要性
昔の写真を綴じたアルバムを取り出したとき,気づいたら「あれ?もうこんな時間!?」と時を忘れて見入ってしまった経験はありませんか?
過去の映像はとても楽しいものです。簡単に見られる状況でさえあれば。
手軽さからフィルムカメラがデジタルカメラに置き換わって来ましたが,様々な映像表示ソフトが提供されているものの,旧来の物理的な写真アルバムほどの手軽さは提供されていません。
これがビデオとなるとさらに深刻です。幼稚園や学校の行事など,子供の姿を見に来ているのか撮影するために来ているのか分からない人が大勢いるのに,せっかく記録した映像は,ただ棚に積み上げられただけの人が多いでしょう。
ただダラダラと撮り続けた映像を見ることも,手間をかけて編集することも大変な労力が必要です。
別の観点から電子的な記録を考えてみます。
会社で使っている共有ドライブを想像してください。誰もが見やすい理路整然としたディレクトリ管理,ファイル名体系を実現しているでしょうか?
やたらに深いディレクトリ構造に陥ったり,混沌とした命名規則に陥りがちではありませんか?
それでも,ビジネス・ドキュメントは,作成時に分かりやすいファイル名やディレクトリ名を付ける必要があるために,検索することで何とかなっています。
しかし,家庭のPCに取り込んだデジカメの映像やビデオ映像はどうなっているでしょうか?
開いて見なければ分からない映像を,上手に整理して保存している家庭は少ないでしょう。
映像を管理するソフトウェアには,この困難な映像管理を誰にも分かりやすい方法で解決することが求められます。
解決策はいろいろあるでしょうが,「時」による管理手法もあるでしょう。
映像を一意に並べることを考えると,時系列で管理するのが最も簡単です。
撮り貯めた映像は,過ぎた時間の記憶です。
時系列に並べることで命名規則や階層管理に気をもむ必要がなくなり,表中にイベント名を書き入れるだけで,さらに映像を呼び出しやすくなるでしょう。
【映像管理の例】スケジュール表ではありません...
3. 映像の記録先と操作について
上で紹介した映像管理はPCを想定していますが,必ずしもPCである必要はありません。
なかなか日本では流行る気配がありませんが,セットトップボックスでも構わないのです。
VHSなどのビデオデッキに換わり,DVDやHDDレコーダーが台頭してきていますが,その操作に苛立ちを感じている人も多いでしょう。
どうしてテレビ番組は画面上で簡単に確認できるのに,記録した映像は単なる一覧表示なのでしょうか?
i.Tunesのようなジャンル分け表示,カレンダーやスケジュール表のような表示ができたっていいはずです。
また,媒体がテープからディスクに換わったのに,操作方法に大きな進展が見られないのも大きな問題と考えます。
例えば,
- 停止と再生:リモコンのボタンやマウスのクリック
- シャトル:リモコンの傾きやスイッチのスライド,マウスのドラッグ
- ジョグ:クリックしながらのリモコン操作やマウスのドラッグ
などといった手法もあるでしょう。
録画した番組の視聴にしてもダラダラ撮り続けたビデオ映像にしても,もっと手軽に動画を操作する方法が必要ではないでしょうか。
4. カメラ単体からの脱却
カメラは画質を提供するだけのものではありません。
カメラも日常的に使う道具である以上,インターフェースが重要になります。
しかし,カメラ単体としての使い勝手に終始していないでしょうか?
過去の記録の呼び出しやすさ,斬新な動画の取り扱いなど,利用者が総合的に使いやすいソリューションを提供することが必要ではないでしょうか。
ウォークマンはiPodに破れたのではなく,iTunesに破れました。
日本の家電メーカーには,同じことがビデオカメラとデジタルカメラにも起こり得ることに気づいて欲しいと考えています。
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