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インターレースとプログレッシブ

 TV映像の仕組みは,現在のような半導体全盛の時代ではなく,ようやく真空管が登場し始めたときに作られたものです。 このため,半導体のように高周波数を簡単に作れるような時代ではなかったことから,低周波数でもリアルな映像を作れるように考案されたのがインターレース(飛び越し走査)方式です。



  1. TVの基本的な仕組み
    走査線  ブラウン管に撮される映像を数千分の1秒という短い時間で見ると,たった一つの光点になります。 超高速フィルムで撮影したTV映像を見ることによって,1つの光点が左から右へ素早く動きながら,上から下へゆっくり遷移していることが確認できます。 人間の視覚には残像がありますので,この光点の動きが映像として見えるのです。
     光点が左端から右端へ動いて作る線を「走査線」と呼びます。この走査線が数百本集まることによって,1枚の映像を作り出しています。

  2. 初期のTVの撮影と受像
    ニポー円盤のイメージ  TVが開発され始めた当初,ドイツのポール・ニポーが発明したニポー円盤が,TV映像の撮影や受像に使われていました。渦巻き状に穴を開けた円盤を回すことによって,それぞれの穴を通過した光が走査線を作りだします。 回転するニポー板の穴を通ってきた光を,光電効果を利用した撮像管で電気信号に変換し,この電気信号を,やはりニポー円盤のような仕組みをもった受像機で映し出したのが,初期の機械式TVです。 これが後に,アイコノスコープを使った撮像管と,ブラウン管を使った受像機に置き換わって,すべて電子的に実現されるTVになったのです。
     現在では,電子ビームで走査するアイコノスコープの撮像管から,半導体のアドレス走査によるCCD方式へ変わっていますが,TV映像の電気信号まで変わった訳ではありません。

  3. インターレーススキャン(飛び越し走査)
    インターレーススキャン  低い周波数で,滑らかで(映像枚数が多くて),高解像度の(走査線の数が多い)映像を作り出すように考えられた仕組みがインターレースです。 インターレースでは,半分の数の走査線を2回に分けて表示します。 しかし人間の目には,多少ちらつきがあるものの,高解像度の映像として見えるのです。
     日本で使われているNTSCと呼ばれる映像信号では,1秒間に60回,上から下へ走査されます。 この1回の走査によって作られる映像をフィールドと呼び, 2つのフィールドを合わせて1つのフレームが作られています。

  4. プログレッシブスキャン(順次走査)
     PCやWS(ワークステーション)のCRTディスプレイでは,プログレッシブスキャン方式が使われています。 これは,当初,ノンインターレーススキャンと呼ばれていたことからも分かるように,飛び越し走査をしない表示方式です。
     現在のように,半導体によって簡単に高周波数が作れる時代になると,飛び越し走査を使わなくても高解像度で滑らかな表示を実現できます。 PCやWSのように,細かい文字や線を扱う場合,ちらつきのあるインターレース方式では,非常に見づらい映像になってしまいます。
     ハイビジョンをはじめとするHDTV(高品位TV)では,現在のTVより走査線の数が約2倍になっています。 これも半導体があるお陰ですが,残念ながら必ずしもプログレッシブスキャンではありません。 高い周波数を作り出すのは難しいことではありませんが,高周波数を使うブラウン管は,それなりに高品質,すなわち高価なブラウン管になってしまうからです。

  5. ノンインターレース画面にTVを映すと・・・
     先に述べたように,NTSCのTV映像では,1秒間に60回走査して60フィールドの映像を作り出し,2つのフィールドを合わせて30フレームの映像にしています。 このため,各フレームごとに見ると,1番目のフレームと2番目のフレームには,1/60秒の時間差があります。
     例えば,走行中の車が映っているビデオを再生しているときに,途中で一時停止ボタンを押してみましょう。 一時停止された映像は,2つのフィールドを表示するため,動いている部分が点滅しているように表示されます。 こういうインターレースの映像を,PCのようなノンインターレースの画面に表示すると,1ラインごとにズレた映像になってしまいます。
    インターレース映像
    ↓
    プログレッシブスキャンしたインターレース映像

     これを防ぐには,TVよりちらつきの多い映像になることを承知の上で,無理矢理1ラインおきに交互に表視させるか,半分の解像度になることを承知上で,半分のライン数にするしかありません。 インターレースの映像をノンインターレースに映すこと自体に,根本的な無理があるのです。


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