ビデオ編集で,シーンの切り替えに使う効果をトランジション(transition)と呼びます。
DTV,特にノンリニア編集では,どんなトランジションでも簡単に作れてしまうので,ついつい編集効果が過剰なビデオになってしまいます。
ビデオを編集する前に,何が主役なのかに注意しなくてはいけません。
結婚式,運動会,家族旅行などのイベントや日常生活の記録,又は,趣味の鉄道や車,動植物などを撮影した場合を例に挙げると,
いずれの映像も,被写体として映っている人,物,動植物が主役であって,決して編集効果が主役ではありません。
トランジションを挿入する時は,DTVならではの派手な効果に捕らわれず,あくまで「主役を引き立たせるためにシーンをつなぎ合わせてる」ということに注意しましょう。
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- カット
瞬時に画面を切り替える手法を,「カット」と呼びます。映画やTVの場面切り替えで,最も頻繁に使われている手法です。
ビデオ編集では,特殊なトランジション効果を加えずにシーンとシーンをつなぎ合わせると,カットになります。
また,ビデオカメラによっては,色々なトランジション効果を挿入できるものもありますが,こういう機能を使わずに色々なシーンを撮影すれば,それだけでカットを使っていることになります。
映画では毎秒24コマ,TVの場合は毎秒30フレームの映像が流れていますので,カットは,1/24〜1/30秒で映像が切り替わることになります。
日常生活で,これほど瞬時に目の前の景色が変わることがないので,カットでシーンを切り替えると,それだけで見る人の注意を引きつけることができます。
このため,ビデオ編集では,特殊なトランジションを使わず,カットを使うだけでも十分と言えます。
カットは,見る人に「変わった」ということを印象づけるので,短い間隔で使うことにより,テンポのよい映像を作り上げることができます。
例えば,映画などのドキドキはらはらするような場面では,非常に短い間隔でカットが入っています。
- フェードイン・フェードアウト
文字通り,徐々に消えたり(フェードアウト),徐々に現れる(フェードイン)ような場面切り替えのことを「フェード」と呼びます。
映画やTVでは,カットイン・カットアウトの次によく使われる手法です。
最近のビデオカメラの多くは,フェードイン・フェードアウトを使ったビデオ撮影ができるようになっていますが,図のようなクロスフェード(一方が消えながら,他方が現れる)を使えるものは,あまり多くありません。
ビデオ編集では,2つのシーンの切り替えにフェードを挿入すると,図のようなクロスフェードになります。
単純にフェードインのみ又はフェードアウトのみ使いたい時は,どちらか一方のシーンを黒や白一色の画面にすれば,フェードイン又はフェードアウトになります。
カットイン・カットアウトが日常にない驚きを印象づけるのと対照的に,フェードイン・フェードアウトは,画面の切り替えが終了するまで見る側を待たせることになるので,画面の切り替えをぼやけた印象にします。
このため,フェードは,画面の切り替えに,色々なニュアンスを含めることができます。
例えば,画面一杯にタイトルを表示してから映像を始める場合,カットイン・カットアウトでは,何か唐突な印象を与えます。しかし,ここにフェードを使えば,いかにも「今から始まりますよ」という雰囲気を出すことができます。
また,撮影した場所や時間が異なるシーンをフェードでつなぎ合わせると,見る人に対して,「まったく違う内容の映像に切り替わるんだ」という心の準備をさせることもできます。
映画やTVなどでも,時間的経過を印象づける場合や,地理的に違うところへ変わったことを印象づけるときに,フェードが使われています。
- スライドイン・スライドアウト
OHPシートの差し替えや,プロジェクターのフィルム切り替えのように,ある映像に別の映像を差し込んだり引き抜くようなトランジション効果を「スライド」と呼びます。
この次に説明するワイプとともに,DTVならではのトランジション効果ですが,映画やTVでは,あまり頻繁に使われることがありません。
フェードのように,見る側を画面の切り替わえが終わるまで待たせるトランジションですが,画面にターミネーター(境界線)が存在することや,2つの動画を同時に見せることができるので,むしろ,画面が切り替わることを強調する効果があります。
使い方についても,フェードと同じように,カットイン・カットアウトによる切り替えでは,違和感がでるような場面切り替えに使うこともできますが,映画などでスライドを使っているシーンは,ちょっと象徴的な意味を含ませて使っています。
映画などでは,同時平行していることを強調するような場面切り替えに使われているのを見かけます。例えば,AさんとBさんが電話をしているシーンとか,薄暗い地下やトンネルの中の出来事が,外ではどんな時間帯に行われているのかを強調するような場面切り替えに使われています。
特に,スライドでは,動きのある映像がフレーム内の物理的位置を変えながら出入りするので,2つの映像を見せながらも,どちらか一方のシーンに見る側を誘導する効果もあります。
- ワイプ
ターミネーター(境界線)の動きに合わせて,あるシーンを拭き取って別のシーンを表に出すようなトランジション効果を「ワイプ」と呼びます。
一見,スライドイン・スライドアウトに似ていますが,ワイプでは,各映像の物理的な位置に変化がないところが,スライドイン・スライドアウトと異なっています。
この物理的な位置が変化しないことから,2つの場面を対比させるような場面切り替えに使われることが多くあります。
例えば,同じカメラアングルで,異なる時間帯に撮影した風景の切り替えに使ったとします。まだ強い日差しの時間帯の風景と,淡い夕日が射している時間帯の風景をワイプでつなぎ合わせること,見る人に時間的変化を印象づけながら場面を切り替えることができます。
また,普段,地獄のように込み合っている新宿〜池袋間の山手線の車内風景と,盆や正月の閑散とした車内風景をワイプで切り替えると,他のトランジションで切り替えるよりも,違いが分かりやすい映像になります。
以上4つのトランジション以外にも,ディゾルブ,ストレッチなどと呼ばれる効果から,扉を開いたり紙をめくるよう立体的な効果まで,様々なトランジション効果があります。
しかし,いずれのトランジション効果も,上記4つのトランジションの発展形でしかありません。
ビデオ編集に使うトランジションは,カットだけで十分です。
カットイン・カットアウトでシーンをつなぎ合わせることで,映像にメリハリをつけながら主役を引き立たせることができます。
そして,ビデオの最初と最後などのように,どうしてもカットでは違和感が出てしまうところにフェードを使うだけでえ,十二分な編集になります。
DTVでビデオ編集するときは,次のように考えながら編集してください。
- 基本はカット編集,補完としてフェードを使う。
- "おまけ"のトランジション効果として,スライドとワイプがある。
- さらに,おまけの発展形としてその他大勢のトランジション効果がある。
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